2011年8月1日月曜日

ゴーカイジャーとカーレンジャー


放送当初から注目していた「海賊戦隊ゴーカイジャー」だが、このところの充実ぶりにはますます目を見張るものがある。過去の34戦隊に変幻自在の能力を持ち、でありながら地球を守らなければならない義理など全くない宇宙海賊が主人公というシリーズきっての型破りな設定が、脚本家、演出家の気持ちを一層かき立てているのだろう。

中でも秀逸だったのが、5月22日放送の第14話「いつも交通安全」。シリアスな戦いとコメディタッチの面白さが同居しているのが第1作以来の戦隊シリーズの伝統なのだが、ときにそのバランスを著しく崩す作品が登場することがある。その最右翼が「激走戦隊カーレンジャー」である。この回はカーレンジャーの元レッドレーサー=陣内恭介が登場し、ゴーカイジャーたちが追い求める各戦隊が持つ大いなる力を手渡すまでのストーリーだった。

だが、そこは別名“お笑い戦隊”とも言われるカーレンジャー、終始一貫のドタバタ喜劇が展開され、シュールな落ちで最後を締めるという内容だ。地球侵略を企てる宇宙帝国ザンギャックの女幹部・インサーン(声は17歳教教祖でおなじみの井上喜久子)がふとしたきっかけでモニター越しに発見した陣内恭介に一目惚れしてしまう。恭介とどうにかお近づきになりたいインサーンは日頃自分の追っかけをしていたという怪人・ジェラシットを呼び寄せ、恭介を生け捕りにするよう命じる。地球に降り立ったジェラシットは、戦隊としての力を失い子供たちに交通安全を教えて回る恭介を襲撃。そこへゴーカイジャーたちが割って入ってややこしい話になっていくという風に展開していく。全体的な流れの中でも細かいギャグネタがちりばめられ、見ている側に休息を与えない切れの良さ。特撮におけるコメディの理想がそこにはあった。

まあ、ここまで書いたところで、常識的に知られるヒーロー番組とは異質の感覚を持たれることだろう。それもそのはず、「カーレンジャー」のメイン脚本家である浦沢義雄氏がこの回の本を手がけているのだ。この人、もとは「ポワトリン」や「ペットントン」など女の子向けの不思議コメディシリーズを主に手がけてきた変わり種なのだ。例えるならウルトラシリーズの実相寺昭雄(この人は演出家だが)的な異端的天才。さらに「カーレンジャー」の演出を手がけた坂本太郎氏と、10数年の年輪を経た元レッドレーサー役・岸祐二の取り合わせにより、最高のコメディを作り上げられた。

「ゴーカイジャー」の全体のストーリーの中ではいわゆる“遊び”に相当するこのエピソードだが、こういうのがあることに作品の懐の深さが表される。それは「ウルトラマン」の「怪獣墓場」などに近いものがある。度が過ぎるドタバタは興ざめ以外のものではないが、5回に1回くらい挟まれるこういう“遊び”が、以外と見ている子供の頭の中に、長く刻まれるものなのだ。




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