2011年8月20日土曜日

来年の大河ドラマの話をしよう


まだ8月だが、来年の大河ドラマの話をしようと思う。今年のは、あまりに残念な内容になってしまっているのでもはや語るに及ばず。その反動というのでもないが、徐々に明らかにされているキャスト陣や、それらが演じる登場人物の、これまでの歴史観に挑戦状をたたきつけるような位置づけが、私のような時代物好きの気持ちをかき立てているのである。もちろん、実際に画が動いてみないと確かな評価もできないし、大胆な時代描写となっている分大ばくちの側面もあって、裏目に出るリスクも当然あるが。

来年の大河ドラマは「平清盛」。大河ドラマはちょうど半世紀を迎える(現行のは50作目だが2年で3作品やった時期があるのでズレがある)。勝者によって塗り替えられていくのが宿命である歴史においては敗者、悪役と祭り上げ挙げられがちなこの人物を、その時代のヒーローとして描いていくのが今回のドラマの趣旨だ。これだけでも挑戦的と言える。とはいえ、大河10作目「新平家物語」でも清盛は主役で登場しており、その意味では大胆さは薄い。

問題はまず、清盛の位置づけだ。一般に伝えられているところでは、清盛は武家にして始めて朝廷への昇殿が許された平忠盛の嫡男ということになっている。だが、院政の創始者であり時の最高権力者である白河法皇の落胤であったとの説が伝わってもいる。この異説には物理的に無理があるとの指摘が多く、現代ではほぼ否定されつつある。だが、今回のドラマではこれを正面から“あったこと”として扱うようだ。「新平家~」ではそれとなく匂わせるに留まっていたが、ある意味タブーと言うべき域に敢えて踏み入れようと言うことなのだろう。1000年近く前の法皇といえど、仮にも天皇家であり、触れると何かとやっかいな領域でもある。

脚本家の意向か演出の要望かは解らないが、これが制作側の挑戦的姿勢ということははっきり伝わってくる。この松山ケンイチ演じる清盛出生の秘密に大きく係わる人物を、かつてのアイドル・松田聖子を当てようというのもまたチャレンジだ。ここの設定がドラマとして成立するかが、ドラマ全体が成功するかのカギと言えるだろう。

もう一つ、期待を持たせてくれるのが、ドラマの語り部を、平家を討ち滅ぼした源頼朝にやらせるという設定だ。平家物語の琵琶法師ではなく、平家の仇そのものに語らせる。しかも、清盛が敢えてその命を救ったことが後の滅亡につながるという皮肉きわまりない人物にだ。

また、清盛とは同志であり後に敵ともなる後白河天皇(後に法皇となるが)を、巨人の星の星飛雄馬と花形満のような関係で描こうとしている点も、これまでになかったとらえ方だ。よくこんな面白い関係に着目したなと、脚本家・藤本有紀の視点には感心させられる。無論これも、画を見てからが本当の評価だが。

ほかにも、宮中の背後で隠然たる力を持つ女たちの泥仕合を檀れい、松雪素子が演じるというのも大いに期待。この設定が面白くならないわけがない。

すでに公式サイトで公開されているが、設定初段階でこれほど期待を駆り立てる大河も久しぶりだ。はたしてどんな画が展開されるのか、心配なのはそこだけだ。

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