2011年10月8日土曜日

iPodと超合金


スティーブ・ジョブズは、iPodやiPhoneなど自ら発想したプロダクツのデザインに一切の妥協を許さなかったといわれている。その執念は自らの声による「Think Different」のCMの中に集約されている。、自分が発想したプロダクツの形は、作る側、売る側でなく、常に使う側の視点に立っており、自分こそがそのプロダクツの最高の使い手である確信に根ざしていた。このことを、「Stay foolish」と何ら恥じることなく実践し続けたことに、彼のすごさがあったのだと私は思う。私を含め、体裁ばかり期にしがちな凡人にはなかなか真似のできることではない。

そんなジョブズ的な思想を貫いた人物に昨日、幸運にも話を聞く機会を得た。その人の名は村上克司氏。我々の世代なら誰もが一度は手にした「超合金」を世に送り出した人物である。

村上氏が「超合金」に託した思いは、まさに使う側の視点、すなわち、テレビで毎週見ているマジンガーZを、ブラウン管に映ったそのままの姿で手にとって、わがものにしたいというぼくら子供たち(当時)の視点を、おもちゃで再現することにあった。いい加減な造形のものを渡してごまかすような真似は絶対してはならない、子供だましなんて口が裂けても言ってはいけない。おもちゃと言えども子供たちに“本物”を提示することが、モノ作りに携わる人間の使命なんだと、村上氏は熱く語ってくれた。それはまるでジョブズの霊が乗り移って語りかけていたように、私には思えた。いや、年齢や実績からすればジョブズよりも村上氏の方が先駆者といえるのである。

ものを作ることとは何か、世の中を切り開くこととは何か。それは種類や国や年代を問わず、常に本物を追求することに他ならない。その作業が例え端から愚行に見えようとも、決して手を休めてはならない。我々の幸運は、こうした先駆者の志によって形作られた本物たちによって育てられたことだと、気付かされる一日だった。

なお村上氏のインタビューの詳細は、11月11日発売予定の「昭和40年男」12月号に掲載の予定。こうご期待。